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サクボス 堀 朋幸のひとりごと

美容室Saku代表 hori=サクボス

これからこちらで日々感じていることをお伝えして生きます。

今年も4月14日を迎えました。

 昨年も変わらない朝でしたが、そのときは、まさか12時間後あんなに大きな地震が起きるとは知る由もありませんでした。
 その日、新入社員研修のための会場作りに追われ、バタバタとあっという間に過ぎた1日で、自宅に帰ったのは22時前。ひと息つきこうかとリビングのテレビをつけると、目に飛び込んできたのは熊本全域に最大震度7を告げる緊急速報。ドラマ? ドッキリ? ニュース? 一瞬、何が起きているかわからなく、現実だと認識するまでに時間がかかりました。
 というのも熊本、菊池、玉名という聞き覚えのある地名を耳にしたからです。冷や汗が垂れる中、記憶を辿ってみると、2年前に我が社を卒業した2人の実家の住所でした。

 同じ福岡の大村美容専門学校を卒業し2年違いで入社してきた、桐竜也と高岡(旧姓)可奈。面識はなかったはずですが、同じ熊本出身ということで仲が良かったのか……。いつも喧嘩をしている2人が、まさか結婚するとは。スタッフ誰にも想像できませんでした。

 そんな2人が熊本市内にお店を出したばかりの出来事。すぐに電話をするものの繋がるはずもなく、慌ててLINEでメッセージを送るのが精一杯でした。

『大丈夫か?』
『大丈夫です!!!』

 その返事にホッとした矢先、16日に再度の震度7を観測。2人は無事なようでしたが、朝のニュースで映し出された熊本城の姿を見たとき、「こんなことになってしまった」と独りごち、なぜだか涙を流していました。

 桐と高岡のたっての願いを受け、熊本での結婚式にはスタッフ全員で参加した。

 ある日、熊本にいる桐から連絡。「ディレクター(以前にも書きましたが私はスタッフからこう呼ばれている)、ガッちゃん(花嫁になる高岡のことである)が全員に結婚式に参加してほしいなんて言ってるんです。熊本じゃ日帰りもできないし、全員ご招待ってことも私たちにはできません。
あの子、サロンを2日休んだらどれだけお店の損失が出るかなんて、まったく考えてもいんです。でも僕がそれをいうと、絶対また喧嘩になってしまうんです。
ここはディレクターから、「行けない!」って言ってもられませんか?」

 それはそうなのだが、みんなに祝ってほしいという気持ちもわからないわけではない。と、ハッと閃いた。
「それなら2人をこちらに招いてお祝いしてあげるよ!」
 桐もいい案だと、嬉しそうに花嫁に相談すると話していた。

 すると今度は高岡から。「それじゃ意味がないんです! 家族や地元の友達に、私が育った会社やそのスタッフを自慢したいんです! だから、みんなで来てもらわないと意味がないんです。一生に一回の私のわがまま聞いてください!」

 嬉しかった。そこまで言われては断れない。『スタッフ全員参加!』を前提として、どうすれば形になるかと必死で考えた。そうだ。社員旅行を天草熊本の旅、そして結婚式への参加にすればよいのでは。
 急遽の変更で、そこから無謀で多忙なスケジュールを組むことになった。

 結婚式当日。それはそれはとても感動的な式を、スタッフ全員で無事に祝うことができた。

 2人が在籍中に担当していたお客さまからのビデオメッセージ、スタッフの余興、もちろん私も主賓としてひと言。何をご挨拶したか皆目覚えていないが。
 また独立して行く2人にサプライズでプレゼントを用意した。

『私が美容師になって初めて買ったシザー』

 我が師匠、奥地博之進先生の名前が刻まれたもので、何度となくシザーを新調しても、それだけは手放せなかった。しかし同じ美容師という道に進んだ息子に託すより、この2人の方が私のルーツを大切にしてくれるようにも思える。
 余談だが、後になってサロンにお邪魔すると、ケースにきちんと入れて飾られていたのには驚いた。

 さぞ喜んでいるに違いない。にやけ顔をしていると、お返しとばかりに私たち夫婦にサプライズ。お色直しの際、本来なら花嫁のお母さまが付くエスコーター(付添い)の大役を、娘のいない私たちに任せてくれたのだ。

 きっと地域の方々に愛される素敵なサロンを作ってくれる。そんな確信にも似た想いをのせ、2人の幸せそうな晴れの姿を目に焼き付けると帰路につくことにした。

 20歳から30歳までの大切な10年間。苦楽をともに、起きている時にはほとんど一緒にいたものですから、息子たちより濃密な時間を過ごしているかもしれません。
 ですからスタッフが離れて行くことに、寂しさを感じずにはいられない。しかしこれからもスタッフたちの卒業を祝い、全国で活躍してくれることを願います。私もそうやって師匠に育てていただき今があるのですから。
 同じ志しを持つ仲間として、同じオーナーとして、今度は対等に美容界の発展に尽くしていく。これほどすばらしいことがあるでしょうか。

 そして桐と高岡、スタッフたち全員で見上げた熊本城が、少しでも早くその美しい姿を取り戻すことを願っています。